実際、新型コロナウィルス(COVID-19)はどの程度流行しているのか?

連日、新規感染者数やその最多更新などがメディアやニュースを騒がせている新型コロナウィルス(COVID-19)
しかし、そのSensationalな報道の割にその流行状況は感覚としていまいちピンと来ない方も多いのではないか? かく言う筆者も、家族や直接の知り合いなど身近に感染した人は(私の知る限り)今のところいないし、内科の医療従事者である筆者の妻が扱った患者さんでもこれまでPCR検査で陽性が判明した方は数えるほど(おそらく片手で足りる程度)のようだ。
実際、新型コロナウィルス(COVID-19)はどの程度流行しているのか?
データに基づいて検証してみた。

日本

Worldmeter(December 10, 2020, 16:47 GMT)
日本の累計感染者数: 168,573
日本の累計死者数: 2,465
日本の累計快復者数: 143,006
日本の現在のActive cases: 23,102

総務省統計局人口推計(令和2年11月1日現在(概算値))
日本の人口: 約125,770,000人

日本全体での人口に対するActive患者率: 0.02%(5,444人に1人)
日本全体での人口に対する感染経験率: 0.13%(746人に1人)
日本全体での人口に対する死亡率: 0.002%(51,022人に1人)

東京都

東京都 新型コロナウィルス感染症対策サイト(2020/12/10 19:45)
東京都の累計感染者数: 45,529
東京都の累計死者数: 530
東京都の累計快復者数: 40,375
東京都のActive cases: 4,624
*Active casesは見つからなかったため、陽性者数(累計)から”死亡”と”退院等”を減算。

# 2021/5/15 追記
最新の東京都のActive casesや感染者率については、Twitterの #東京コロナ速報 のHash tagでつぶやいています。

「東京都の人口(推計)」の概要
東京都の人口(推計): 13,963,751人(2020/11/1)

東京都での人口に対するActive患者率: 0.033%(3,020人に1人)
東京都での人口に対する感染経験率: 0.33%(307人に1人)
東京都での人口に対する死亡率: 0.0038%(26,347人に1人)

結局、それってどれくらい多いのよ?

東京ドーム(46,000人収容)

任意の日本人で満員にした場合

新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したことのある人は61.66人
そのうち、現時点で感染中の人は8.45人

任意の東京都民で満員にした場合

新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したことのある人は149.98人
そのうち、現時点で感染中の人は15.23人

満員電車(308人/両 乗車時)

東京メトロ東西線15000系中間車 乗車率199%で計算
国交省 最混雑区間における混雑率(2019)
Wikipedia 東京メトロ15000系電車

任意の日本人で満員にした場合

新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したことのある人は0.41人
そのうち、現時点で感染中の人は0.057人

任意の東京都民で満員にした場合

新型コロナウィルス(COVID-19)に感染したことのある人は1.00人
そのうち、現時点で感染中の人は0.10人

現状の日本においてマスク着用による感染防御は有効か?

これまで計算してきた数字について、皆さんはどのような印象を抱いただろうか? この数字が多いと感じるか少ないと感じるか、あるいはどの程度の脅威と感じるかは、もちろん個人の主観や経験に依る部分が大きいので一概には言えないだろう。

私自身は、率直に言ってこの数字を実際に計算してみてイメージ以上に少ないと感じた。主観を排して言えば、人口に比してActiveな感染者はごく少数と言って差し支えないと思う。
そこで疑問に思ったのが、政府や自治体などをはじめ巷で感染予防策として盛んに呼びかけられているマスク着用の有効性である。果たして、現在の日本においてマスク着用は新型コロナウィルス(COVID-19)感染予防に効果的なのだろうか?

結論から言えば、マスク自体の性能以前の問題として私は少なくとも現在の日本における市中の一般的な状況においてマスク着用による新型コロナウィルス(COVID-19)感染防御は極めて限定的ないしほぼ無意味だと考える。
現状、任意の2名が集まった場合にどちらか一方でもActiveな新型コロナウィルス感染者である確率は、日本全体の平均でわずか0.037%, 感染者の割合が比較的多い東京都民に限ってもわずか0.066%でしかない。率直に言って、もはや無視しても問題ない”誤差”程度の確率と言って差し支えないと思う。

このことは、日本における感染症専門医の第一人者・岩田健太郎氏(神戸大学感染症内科教授)も自身のBlogにて指摘されている。以下、引用。

感染者がめっちゃ少ない状況ではどうか。この場合、コミュニティーにほとんどウイルスがいない状態、ということを意味しています。この場合のマスク着用効果はほとんどないか、全然ないかのどちらかでしょう。だって、ウイルスいないんだもん。いないウイルスの遮断効果は期待できません。
よって、そういう場合はマスク着用の意味は(ほとんど)ないでしょう。

いわば、川原の砂から砂金をさらうような話ではないかと。

まとめ

新型コロナウィルス(COVID-19)を決して侮るべきではもちろんないのだろうけど、かと言って脅威を過大に煽ったり、過度に恐れて萎縮するのも考え物だと個人的には思う。要はその脅威を、その実態以上でも以下でもなく、等身大で正しく認識することが重要だと考える。そのためには新規感染者数よりも、人口比とか、陽性率や重症化率などのRate系の数字を追った方が正確な実態を認識しやすいのではないか?
イメージにとらわれたりパニックを起こすことなく、客観的事実に基づいた合理的な行動を心がけたい。
この記事が、これから年末年始に向けての例えば帰省や忘年会・新年会の会食などのイベントを始め、皆さん一人ひとりが最適な行動を判断するための一つの指針、ひいては日本における感染拡大抑止の一助になることを願ってやまない。